展覧会

特別企画展「近代短歌史から現代短歌史へ―篠 弘 あらゆる風に載りて種蒔く」

2024年03月16日〜2024年06月09日
会場
日本現代詩歌文学館
観覧料
無料
休館日
展示期間中無休
リンク
展示内容
・書、原稿などの直筆資料
・土岐善麿、窪田章一郎など、交流のあった文学者の関連資料
・遺愛の美術品、骨董品など

展示テーマ

 2022年12月12日に89歳で逝去した、当日本現代詩歌文学館の前館長篠弘の追悼特別企画展を開催する。
 篠弘は厖大な資料を駆使して、近代から現代にいたる短歌史を理論的・実証的に構築した短歌史家であった。『近代短歌史』(1974)、『近代短歌論争史』(1976/1981)、『現代短歌史』(1983-94)などの著作はもとより、女性歌人の存在やその作品に光を当てたこと、戦争詠の丹念な掘り起こしと読解を通して権力と個人の問題を追及したことも、その大きな業績の一つである。
 実作面においては、自ら生まれ育った東京の都市空間における現代人の生活、とくにも職場での哀歓、苦悩、孤独といった人間関係の機微を歌い、新たな都会的詠風を確立した。身体感覚を活かした新しいリアリズムを提唱した篠弘はまた、実生活では小学館の編集者として1960年代の百科事典ブームを牽引し、国内外の作家や芸術家、出版関係者と幅広く交渉・交流を行い、世界を股にかけて活躍した。さらに、現代歌人協会理事長を長く務め、愛知淑徳大学教授・文化創造学部長を担ったほか、詩歌人では初めて日本文藝家協会の理事長に就任、著作権の問題等に取り組み、また日本ペンクラブや日中文化交流協会の要職を務めるなど、社会的な活動も幅広く行った。宮内庁御用掛としての皇室への短歌指導も広く知られるところである。
 作者の有名無名を問わず、現代の詩歌資料を悉皆収集して後世に贈るという理念のもとにスタートした当館の設立および運営への尽力も含めて、篠弘のこうした広範な活動は、短歌や詩歌文芸をはじめとする文化芸術、ひいてはわれわれが生きるために必要な「知」の種を広い世界に向けて撒き、その芽生えを待望する行為であったと言うこともできるだろう。
 短歌史家であり、また短歌実作者であったその両面を軸として、さまざまな活動と実績をも概観し、ひいてはその豊かな人間性に迫ることを目的に本展を開催する。

共催:まひる野会
後援:小学館

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